Let's play our music!【うた☆プリ】
第22章 気付けなかったもの
それからも製作は続いた。
アレンジはこうした方が良いんじゃないかとか、このフレーズはテーマから離れてるんじゃないかとか。
アイドルから出される様々な意見を、麗奈は時に受け入れ、時に反論して曲に色を足していく。
その度に変化する曲に、さらに色を足すか否か。
何度も何度も話し合う彼らの情熱を、垣間見た。
「…プロはやっぱり凄い」
「なに、1日目にして自信喪失?」
「そういうわけじゃないけど…しみじみと違いを実感した」
決して自らの力を過信していたわけではないし、この仕事を軽んじていたわけではない。
しかし、孵化してさえいない、あくまで"卵"である私たちと、第1線で活躍し続けるプロ。
その間にある決定的な差。
その大きな隙間は、意思を揺らがせるには十分すぎて。
本当に夢は叶うのか。
叶ったとして、この人たちと戦えるのか。
そんな迷いが、私の中に渦巻いている。
「馬鹿」
「いたっ…なに?」
「この世界に飛び込んで2年も揉まれりゃ覚悟なんてもの自然と身につくわ…本気ならね」
誰しも初めから自分の居場所を確立していたわけじゃない。
最初は不安定で、明日の仕事はあるのか震えながらスケジュールを確認してため息をつく。
それでも、ここで生き抜きたいのなら。
そんなところで止まってる暇などないのだ。
「…そっか」
「あなたも2年芸能界にいた人間でしょ、基盤は出来てるわよ」
……でも、その時の私は本気じゃなかった。
麗奈の言葉に曖昧に頷き返す。
それ以上は何も言ってこなかった麗奈は少し遠くで未だ話し続ける4人をちらりと見やると、一呼吸置いてから私に向き直った。
「さ、次はあなたの番よ」