Let's play our music!【うた☆プリ】
第21章 QUARTET NIGHT
最後の1音が空気に溶け込み消えるまで、何も言えなかった。
音楽に心を鷲掴みにされて、ゆさぶられたような錯覚さえする。
それ程までに、麗奈の作った曲は聴く者を魅了した。
「….すごい」
これが、プロ。
要求されたもの以上のクオリティで応える。
4人も満足げに頷いたり、挑戦的な笑みを浮かべたりと反応は様々だが、いずれも不満を持っているようには見えなかった。
「…どう?」
「流石と言ったところだな」
「あなたに褒めてもらえるなんて嬉しいわ、カミュ」
「これはアレンジ等々のアイデアを出していくだけで完成しそうだね、初めの段階でここまでのものなんて…」
「藍、皆の意見が事細かだったから私のイメージも湧きやすかっただけよ」
これが麗奈。
アイドルから思いを聞き、意見を引き出すことでこんなにも色鮮やかなものになるのか。
……凄いなぁ。
この時の私は、ただ彼女を尊敬した。
作曲家としてでもなく、アイドルとしてでもなく、1人の人間として。
この感覚はもしかしたら、アーティストとしてはダメなのかもしれない。
その才能を羨み、妬み、目標とすることもなく、ただ凄いの一言で終わってしまう。
これは、高みを目指すことを諦めたことになるのかもしれない。
でも私はどこかで納得していた。
なぜ私が作曲家としてより、アイドルとして評価されるのかが分かった気がした。
アイドルの時に当たり前に出来ていたことが、出来なくなっていたから。
パートナーの思いを聞こうとしなかったから。
「…?」
麗奈が黙ったままの私の顔を覗き込む。
それに静かに首を振り、心からの思いを言葉に乗せた。
「麗奈は、作曲家なんだね…尊敬するよ」
「…そう」
何を当たり前のことをという顔をした彼女だったけど、やがて私の変化を感じたのか、薄く笑った。
きっとその時の私は、何か吹っ切れたような表情だっただろう。