Let's play our music!【うた☆プリ】
第21章 QUARTET NIGHT
「?」
「っ…あぁ、ごめん。何?」
「もうすぐ着くわよ。ずっと空を見てたけど、何かあった?」
「ううん…何か、誰かが歌ってるような気がしただけ」
どこか懐かしい、優しい歌声が聞こえた気がした。
気のせいに決まっているけれど。
合宿を承諾したあの日から数日。
私は麗奈と人里離れたところにある社長の別荘に来ていた。
ここを自由に使っていいらしいのだが…。
「ヘリで連れてってくれても良かったのに…!」
「あの人も気まぐれな人だから。諦めるしかないわ」
「麗奈は早くも悟りを開いてるんだね…」
最初は学園に帰ってきたときに乗っていたものと同じヘリに乗っていたのだが、何を思ったか操縦していた社長は突然私たちをおろすと言って着陸。
私たち2人を機内から追い出すとさっさといなくなってしまった。
仕方なくそこから電車やら車やらを乗り継いで、やっと辿り着いたのである。
それにしたってこの別荘遠すぎる。
いくら距離があるとはいえ交通網が発達している現代で数日もかかるってどういうことだ。
麗奈曰く1日に出る便が少ない電車に乗るためやむを得ないということらしいが、真実はわからない。
「広いなぁ…これ別荘って、社長凄いね…」
「そりゃあ伝説のアイドルだし、学園長だしね。スケールが違うわ」
「ここで2人っていうのも寂しいね」
麗奈はともかく私は今まで賑やかな暮らしをしてきていたから、突然の静けさにはきっと慣れないだろう。
そう思いながらため息をつく。
「2人じゃないわよ」
そこに降ってきたのは爆弾発言。
「……どゆこと?」
「間抜けな顔しない、仮にも元アイドルが。中に入れば分かるわよ、きっともう着いてるから」
「ちょ、ちょっと待って!」
私に説明する気がないらしい彼女はスタスタと歩いていく。
話してくれないのもまずいが、ここに置いて行かれる方がまずい私は、仕方なく追及を中断して後についていくしかなかった。