Let's play our music!【うた☆プリ】
第3章 再会と初授業
入学式の次の日。
初めての授業で、緊張のあまり随分早く教室に来てしまった私は、置いてあったピアノを何となく弾いていた。
「…はぁ…」
弾いた曲は昔歌った麗奈の曲。
懐かしさと共に彼女の凄さを改めて感じていると、ふと背後に気配を感じた。
「っ?!」
「あぁ、すみません。驚かせてしまいましたか」
「あなた、あの時の…」
「お久しぶりです」
そこにいたのは私に早乙女学園の存在を教えてくれた男の人。
制服を着ているから同じクラスなのだろう。
驚きの再会にぽかんとしているも、彼は気にせずに言葉を続ける。
「申し遅れました、私は一ノ瀬トキヤです」
「あ、私は…」
「知ってますよ、さん…この曲の歌い手ですね」
「…ご存知でしたか」
「ええ、素敵な歌でしたから」
面と向かって自分の歌を褒められることが今までなく、照れと羞恥で思わず俯く。
それと同時に、作曲家志望の今の自分をどこか後ろめたく感じてしまった。
前は前、今は今と割り切ればいいのに。
頭で理解していても身体は素直で、身動きの取れない私と一ノ瀬さんの間に沈黙が下りる。
それを破ったのはその後続々と入ってきた生徒たちで、自然と途切れた会話に内心安堵しながら、私はピアノを離れて自分の席に着いた。
程なくして日向先生がやって来て、朝のHRが始まる。
「お前らは高い競争率を勝ち抜いて入学してきたわけだが、今日からが本当のバトルとなる」
どのクラスも、アイドル志望と作曲家志望の生徒が混在している。
互いを理解するために、共に勉強をするらしいが、1学期の最後にペアを組むらしい。
その発言に教室がざわめく。
「そして、ペアの相手はこのSクラスの中だけに限らねぇ。Aクラス、Bクラス、どのクラスでも気に入った相手を見つけて良いんだからな」
つまり、ペアは自由ってことか。
優秀な者同士を組ませるのではなく、相性の良いものを組ませようとしているようだ。
(ま、そうだろうね…)
自分が誰かとペアを組むなんて今はまだ全く考えられないが。
「そのペアで参加してもらう、卒業オーディション。優勝したペアには、メジャーデビューに通じる道が開けるってわけだ!」
その言葉に多くの生徒の目が鋭くなる。
誰もがそれを目指してきているのだ。
先生はさらに、多くの人と知り合って完璧なペアを探せと続けた。