Let's play our music!【うた☆プリ】
第19章 転機
帰りの飛行機の中で、何を考えていたかは覚えていない。
ただ、もう泣かないとだけは決めていた。
「お疲れ様デスぅ、Miss。早速なのですが、荷物を置いたらすぐにミーの部屋に来てちょーだいっっ!!」
学園長が所持する飛行機が学園の敷地内に着陸する。
ちなみに操縦していたのは他でもないシャイニング早乙女学園長。
お分かりいただけるだろうか。
つまり豪快な彼らしい操縦を披露されたのだ。
生きてこの景色を見ることが出来たと生の喜びを実感する私に、有無を言わせず次の指示を出した彼は軽やかに学園内に消えていく。
「…本当にお疲れと思ってくれてるならその用事を明日にしてほしい…」
本心を言えば揺れない柔らかいベッドで泥のように眠りたい。
しかし学園長の指示に従わないわけにはいかない。
仕方なくトランクの持ち手を掴み直すと、まずは寮の自室へと足を進める。
いつもなら必ずどこかで誰かが音楽を奏でている学園が、今はひっそりと静まり返っている。
その事実が、やけに私を寂しくさせた。
皆が帰ってくるまで、まだ数日ある。
それまで、賑やかな生徒の声も、色鮮やかな楽器の音も、何も聞こえないここで1人過ごすのだと思うと憂鬱だった。
「寮でもひとりだしな…」
きっと学園長から課題が出されてそれをこなしているうちに日々が過ぎるのだろうが。
どこに行っても話す相手がいないというのは、なかなかに辛そうだ。
「お待たせしました、学園長」
「ウェルカムッッ!!疲れているところソーリー!」
「…で、なんの御用でしょう」
この人は疲れていないのだろうか。
そう思えるほどアグレッシブに座っていた椅子から飛び上がって私の前で1回転してみせた学園長。
洗練された動きは流石伝説のアイドルだが、今はそんなことに気を取られている暇ない。
早く用事を聞いて、部屋で寝たいのだ。
急かす私に座れと促した社長は、1枚の髪を差し出してくる。
「お前は今日でこの学園を去れ」
退学届。
紙に書かれてその言葉と学園長の声に、私の眠気は一気に吹き飛んだ。