第1章 1「芥川とわたし」
唐突に芥川が動き、わたしの顔へと手を伸ばしてきた。頭は急所だけど、彼の手に殺意はない。こちらも身構えるが、芥川の行動のほうが一瞬疾かった。
頬に優しく触れられて動けなくなる。
「、縋りたいなら僕の元へ来い。肩など飽くまで貸してやる」
やめろ言うな、そんなことを言われたらわたしが決壊してしまう。
無様な涙を堪えるわたしに、芥川が”羅生門”を発動させた。黒いそれは攻撃の意思などなく、わたしの手首を柔く握った。
最後の強がりを口に出す。
「あんたは最低だ」
「欲しい物は奪う。此方側での常識だ」
それに、
「貴殿も満更でもあるまい」
「うぐ……だったらわたし、あんたの肩借りまくるから!」
まだそっとしか触れられないけど、いつか、『普通』になれるのだろうか。
彼の手の温もりを感じて、私は赤面しながら言った。