第3章 いつか見た夢のように儚く TOA ガイ夢
乾いた木刀がリズムよく響いている。
中庭には嬉しそうに剣をふるうルークの姿とその木刀を受け止めるヴァン響長の姿があった。
それを嬉しそうに眺めている赤髪の少女がいる。
ルークの妹の秋良だ。
特殊な椅子に座って秋良は二人の行動をじっと見ている。
この子の足は生まれつき悪く、一人では歩けない。
なので基本的には車いすで移動をしている。
ルーク付きのオレの仕事ではないのだが、時々兄の剣をふるう姿が見たいと懇願され連れてきている。本当は危ないからここに来てはいけないと父である旦那様に言われているはずだが、それをものともしない。
そう考えると似たもの兄弟だなぁなんて思えて少し笑ってしまう。
くすっと笑ってしまって慌てて秋良を見る。どうやら聞こえなかったようだ。
聞こえたらすねてしまって彼女はむくれてしまう。
彼女は緑の目を輝かせてみている。話しかけても反応がないから、それほど集中しているのだろう。
一安心してガイもルークとヴァンのやりとりを眺める。
「おらぁ!」
ルークは基本的に攻撃、攻撃、攻撃ばかりだ。そういう性分なのだろう。ヴァンはそれを負担のかからないよう刃を受けて流していく。
「甘い!」
力量差は明らかだ。我慢のできないルークはじれったくなったのか、つい大振りになってヴァンに仕掛ける。もう力技だ。剣技ではなくなっている。ヴァンはわずかに体をそらし攻撃を避けた。
「うおわぁ!」
するとルークは思いっきりやっていたせいで前に倒れこみそうになり、思わず木刀を手放した。それが秋良に向けて弾丸のように飛んでくる。
秋良は驚いてよけようとするが、車いすでは間に合わない。オレは秋良の前に出て木刀を人気がないところにはじき返した。
「ルーク! 集中するのはいいけど熱くなりすぎるな! 周りをもっと見ろ!」
「ガイ!?」
するとルークは初めてオレがいたことに気が付いたかのように驚いた。そしてその後ろで震えている秋良にも気が付いたようだ。