第6章 かみさまのこどもたち 神田夢
誰もいない駅のホームでレイアはそっと息を吐いた。
白い息は空中で膨らんで霧散する。呼吸をするたびに空に消えていく。存在していたものがひっそりと自然に溶け込むのを見てレイアは思う。
今の自分はまるでこの息のような生き方をしているのではないかとぼんやりと考えて、思考は息のように溶けていった。
だが、現実にレイアは世界に溶け込まず、存在し、寒さで手をかじかませている。
「まだかなー……」
一人ぼっちで手をこすりながら鉄道を待つのはなかなか辛い。もうかれこれ40分ほど待っている。
今回の任務でファインダーはみんな死んでしまったので、一人での帰還になってしまったのだ。しかも、廃村での戦いで連絡手段がない。
仕方なく地図をひっぱいり出してなんとか駅にたどり着いたのである。がらんとした駅のホームで鉄道を待っているのはレイア一人だけだ。駅員すらいない。状況は最悪だ。見上げるとちらほらと雪が降り始めている。
もしかするとどこかで鉄道が止まってしまっているのかもしれない。それか廃線なのかもしれない。
そう考えるとぞっとするが、天候なんて自分の意志では変えられないことなので仕方がないことなのだ。もうまさに神頼みをするような状況なのである。