第5章 あなたを追いかけて HQ 岩泉夢
「あっ・・・・・・」
「あぁ?」
あぁ、言ってしまった。
頭を抱える私。さっきのかっこいいの言葉がどういう意味か察してしまった岩泉さん。まだわかっていない兄。三人の間に走る沈黙。
二人の様子を見て兄はようやく状況が違うことを察したらしい。
「あれ?」
怖くて岩泉さんの顔を見れない。私は兄の囲いから静かに離れた。
「なーんだ、告白じゃなかったかぁ。及川さん勘違い☆」
なんとか場の切り替えを図ろうとしている兄がしらじらしい。
もう私の態度で岩泉さんはわかってしまってるだろうし、兄はおちゃめに言っちゃえば許してくれると絶対に思っている。私の拳は震え始めた。
「お兄ちゃんなんか・・・・・・らい・・・・・・・」
「ん?」
兄はよく聞こえなかったようで、顔をこちらに近づけてくる。
私は顔をあげ、目をぎらつかせて思いっきり足を振り上げた。
「大っ嫌い!!」
私の蹴りは見事兄の股間を強打した。
言葉にならない声で兄がうずくまる。
その後、岩泉さんとは家やメールで話すことができるようになった。兄の邪魔はもうない。相手がもう私の気持ちを知ってるというのは気恥ずかしいけれど、それでも私はこの恋を諦められない。
それに、最近では及川の妹という名称ではなく名前で呼んでくれるので、進歩がないわけじゃない。私の恋はまだ望みはあるようだ。