第4章 夜の先 進撃 アルミン夢
喘ぐように言葉を紡ぐ彼に私は問うた。
「まだ見たことのない世界はここより美しいのかな」
返事はすぐには返ってこなかった。けれど私はさらに話し続けた。
「大きな塩の水たまりも、その中に棲んでる大きな魚達も、壁のない世界も、私たちはきっと見つけることができるよ」
うつむいて嗚咽を飲み込んだのが横から聞こえてくる。
「私は信じてる。この手が真っ赤に染まっても、四人で世界を旅することができるって」
顔を上げこちらを見たアルミンの顔はぐちゃぐちゃで汚い。
けれど、私にはそれすらも愛しく彼を抱きしめた。
「次は私がやる。アルミンはみんなが死なないようにいっぱい考えて、生き抜こう」
アルミンは躊躇するように体を離そうとしたけれど、私はそれを許さず強く強く抱きしめた。
そしてゆっくりと彼の両手が私の体を包み込み、か細い声でありがとうと言った。その言葉は私にはこそばゆく、嬉しい
ものだった。そして思う。
私にとっての夢はもしかしたら大きな水たまりや綺麗な景色を見ることじゃないのかもしれない。
当たり前のようにみんなが笑って生きていける環境で、好きな人の隣にいれれば幸せなのかもしれない。だから私はこれから身体中を真っ赤にしながらでも突き進んでいくんだろうと思う。