第1章 純粋な死神 グール 鈴屋什造
今日私はある人物について話そうと思う。
まず、彼のことを話すために私のことを話そう。
私はCCGの保護施設で育った。
主にそこでは喰種に家族を殺された子ども、身寄りのない子供を預かる施設だった。
施設という隔離されているような環境で育つと感覚がおかしくなるのか、みんなそれぞれ闇を抱えているせいなのか普通の子はいないと言ってもいい。
私も狂っている自覚がある。
私は目の前で両親が食べられていくのを見てしまった。彼らを食べた喰種はサディストだったらしく、悲鳴や恐怖する顔を見ながら嬉しそうに食べていた。苦しむ表情を堪能していた。
骨が砕ける音、肉が裂ける音。パクパクむしゃむしゃもぐもぐ。次第に声が弱弱しくなっていく両親。
それを眺めながら何もできない私は震えて自分の番を待つだけだった。結果的に喰種捜査官が私を喰種が食べる前に排除したので私は助かった。父と母を見殺しにして。
そのせいか私には怒り、悲しい、苦しい、涙が出る、というものが欠如していた。
むしろ、私は感情に愚鈍になり、冷静な判断が出来た。そのせいか訓練では二位という好成績をたたき出していた。だんだんとそのことを好都合だと思うようになった。
わたしが生きる道は選択肢が少ない。忘れて日常に生きるのは困難だったから、捜査官の道を選ばざる得なかった。
ちなみに私が語ろうとしている男の子は鈴屋玲(のち什造)という男の子だ。
鈴屋玲は私たちにとって恐怖の対象だった。
施設中でも鈴屋玲は特殊だった。
白髪の髪。まんまるとした瞳。同じ年齢の子供より背は低い。
見た目そのものは天使のようにかわいいが、実際は悪鬼のようにささやかれている。
日々聞こえるのは彼への恐怖だった。
普段は呆けているようにおとなしいのに、誰かが彼の琴線に触れる発言をすると暴れだす。
その様を見ている私は正直彼のことはよく思っておらず、近づきたいと思わなかった。
なんでも喰種に育てられたしく、価値観が違うのだと思う。
誰に対してもよくわからない言葉をいう。コミュニケーションにおいてまともな会話は成立しない。というより彼自身が必要としてなかったように思う。
最近、施設内で小動物の死体が出てくるようになったのだ。すぐに犯人捜しは始まった。そして白羽の矢が立ったのは案の定、鈴屋だった。