第14章 赤い夫とのご挨拶
「ああ。もうこんな時間だ。すまない、私はこれから会議があって行かなくてはならないから失礼するよ」
『あ、はい』
私は立ちあがった。征十郎も私に続けて立った。
「じゃあ2人とも、また屋敷で会おう」
お義父さんはジャケットを羽織りながら言った。
「私の部屋は離れにあるから会うのは少ないだろう。夕食の時には仕事の都合にもよるが、一緒に食べよう」
「はい」
「じゃあ行って来るよ」
『ありがとうございました』
私は少しお辞儀をして笑顔で見送った。
〈あの〉
美人秘書さんが話しかけてきた。
《は、はい?》
私は緊張と驚きで声が裏返ってしまった。
〈社長はお二人に会うのをとても楽しみにしていらっしゃいました。あとは…………〉
《あとは?》
秘書さんは私の耳に口を近づけて囁いた。
〈……………孫が見たいと〉
秘書さんはにこっと笑って言った。
《Oh……………》
〈じゃあ私はこれで失礼します。Have a good time.〉
《あ、ありがとうございました》
秘書さんは颯爽と去っていった。