第21章 赤い夫との結婚
「やあ」
征十郎は地下にある駐車場で私を待っていた。
『遅くなって申し訳ございません』
「いや。全然待ってないよ。さあ乗って」
征十郎が助手席のドアを開ける。
『ありがとうございます』
私は征十郎のとても高そうな車に乗り込んだ。
私たちの間にエンジン音だけの時間が流れる。
私は外の景色を眺めていた。
「美桜」
『はい。何ですか?』
私は征十郎の方を向く。
「今ぐらい敬語を止めたらどうだい?」
『うん……。ごめん』
「すまないね。いきなり誘ったりして」
『いや。そんな謝らんといて?逆に私こそ奢ってもらったりして……』
「奢ることなんてどうでもいいんだよ。俺が気になっているのは今日は何か他に用事があったのかという事だ」
征十郎の横顔の表情はどこか曇っていた。
『え。今日は用事ないよ?なんで?』
「本当かい?美桜の表情がいつもより暗い気がしてね。無理して承諾したのではないかと心配していたんだよ」
『あ…………』
本当に申し訳ない事をしたと思った。折角誘ってくれたのに心配をかけさせてしまった。
『2人でご飯とか初めてだし……。それに男の人と2人で出かけるのも全然ないから…………』