第11章 11
ゴールデンウィーク中盤、私は成田空港に来ていた。
4月の下旬、朝日奈さんからこの日に帰国する旨のメールを受け取ったのだ。
最後に空港ですれ違ったときはまだまだ肌寒かった。
あの日から季節は移り変わろうとしている。
到着予定時刻がすぎ、ちらほらと到着出口から人が出てくる。
落ち着かない気持ちを抑え、じっと待つこと数分。
見慣れた明るいオレンジがかった髪の毛の長身の男性が到着出口にあらわれ、驚いた顔でこちらをみていた。
「朝日奈さん!お久しぶりです」
「まさか、来てるなんて思わなかった」
「空港と日時をあんなに細かく教えていただいたのに、行かないなんてできません」
そういうと、そうか、それもそうだ。と朝日奈さんは優しい顔で私を見つめた。
誰かを透かしてではなく、はっきりと私だけを見てくれている。
そう感じた。
「あの時…さくらが帰国するときのこと、覚えてる?」
忘れられる訳がない。
大切な人から受け取った、大切な言葉たち。
「はい。今でもはっきりと思い出せます。大切な思い出です」
思い出すだけで感極まって涙がこぼれそうになる。
それをごまかすため俯くと、朝日奈さんの大きな手が私の頭を撫でた。
「…向こうのしがらみに全部ケリをつけてきたんだ」