第5章 5
最後の余興である出演者全員の合唱を終え、ドレスのままホワイエに出る。
すると、待ちわびていた、とばかりに学院の友人達が口々にすごかった!いつのまにあんなに上手になってたの?と声をかけ、褒めてくれる。
たくさんの花束を受け取り、ひとしきり波がすぎてこの花束達をどこに置こうかとおろおろとしていると、背後から懐かしい日本語で声をかけられた。
「さくら」
振り返ると、そこには舞台上で恋しくてたまらなかったひとの姿があった。
「朝日奈さん!舞台から見えましたよ!あの、本当にありがとうございました。…楽しんでいただけましたか?」
舞台上では気分が高揚していて、勝手にどうしようもなく愛おしく感じてしまっていたことをふと思い出し、目が合わせられない。
「あぁ。素晴らしかったし、楽しかった。
…なんだか、昔を思い出した」
いつだったか、朝日奈さんのこんな切なげな表情を見たことがある。
一体朝日奈さんは私に誰を重ねてみているのだろうか。