第2章 2
客間に朝日奈さんを通す。
「今日の服はどんなのか、見せてもらえるかしら?」
「はい。ちょっと待っててください」
奥の部屋にワンピースを取りにもどる。
母から何かあったときのために、と用意された桜色のワンピース。
当時は使うわけない、と笑いながら断っていたが、無理やり持たされこっちにきたのだ。
まさか役立つ日がくるなんて思いもしなかった。
「おまたせしました」
「あら。素敵なワンピースね。さくらの肌の白さによくにあってる。そのワンピースに合わせてセットとメイクするわね」
座るよう促され、言われるがまま椅子に座ると、早速髪の毛のセットから始まった。
「本当に綺麗な髪ね。ずっと触っていたいくらい」
「そんな…言い過ぎですよ」
「アタシはそんな簡単に人を褒めたりなんかしないわ」
ヘアアイロンで髪をまとめながらアップにされる。
髪が終わるとメイクにとりかかった。
普段自分がメイクするよりも多い手順で丁寧にメイクされる。
真剣な眼差しで顔を眺められるのはなんだか恥ずかしいが、ひと工程終えるごとに見せる朝日奈さんの満足げな笑顔は見ているこちらも嬉しくなってしまうものだった。