第4章 運動神経無いだけで
「そうそう。さっきよりも形が整ってきたよ」
「はぁ…っはぁ…っ。そ、そう?」
私は剣を持つ手を止め、左手に持ち替えた。
「はぁ…はぁ……。さすがに疲れたよ…」
「そうだよね。じゃあ休憩とろうか」
エリックは「じゃあダイニングにでも行きましょっか」と軽く言って、剣を片手に部屋の出口へ歩き始めた。
「うん。………あぅっ…!!」
ガタンっ!!
全身に走る強い痛み。いつもよりも下の位置から見える景色で、一瞬にして転んだことが分かった。
「…!! 大丈夫?!」
エリックはすぐにこちらに駆けてくる。私はそれを見て「大丈夫」と笑ったが、立とうとしてすぐにだめになる。
「いっ……!!」
左足の足首。ズキンっと酷く痛んだそれに、顔を歪ませて私は倒れこんだ。
「……痛…っ」
「麗華ちゃん…足くじいた…?」
エリックはかがみこんで私の顔色をうかがう。
「うん…。ちょっとくじいちゃった…みたい…」
私が上半身だけを起こしてそう言うと、エリックはすぐに立ち上がり剣を置いて、私の目の前に立つと、肩と膝裏に手をまわした。
「ちょっ! エリック?!」
「とりあえず安静に出来る所に連れていかなきゃ。今ちょっとへクターは居ないから呼べないけど…。痛いかもしれないけど…我慢してね」
そういえばへクターは怪我を治すような担当もしていると言っていただろうか。そんなことを考えている間に、エリックは私をゆっくりと持ち上げる。
「痛っ!!」
再び走る激痛。
「…動くと痛い?」
「…痛い…」
私がそう言うと、エリックはそっとゆっくりに動き始める。
しかし、エリックの足が地面につくタイミングで小さな揺れが出来て、そのたびに私は顔を歪ませた。
「……これだと階段を上るのは無理かな…」
エリックは苦い顔をして廊下を進み、階段の手前の部屋に入った。
「…とりあえずこの部屋で、へクターが返ってくるのを待とうね…。椅子…座れる?」
脚の短い椅子を足で引きずり、部屋の真ん中ほどにさせると、エリックは私をゆっくり降ろさせようとしてみる…が。
「いっ…あっ…」
足がぶらつき足首が痛む。自分で座ることは出来なさそうだ。
「……。じゃあ…。…よっ」
「キャッ!!」
私は椅子に座るような形になっていた。
エリックの上に座って。