第3章 私と私
「では…私の専門から…。私は、基本的には、毎日のドリンク作りが担当です。麗華さまが必ず寝る前になると、ミルクティーを飲まれるので、それを入れているのも私です」
確かに、あのミルクティーはかなり上質な味がした(と思う)。自分の味覚に自信があるわけではないが、おいしい、まずいの差は分かる。
それに、ここに来るまではそこまでミルクティーを飲みたいと思ったことは無かったが、ここに来てからは、やけにミルクティーがおいしく感じる。
それが、ミルトの腕があってこそなのか、こっちの世界の麗華さんがミルクティーが好きすぎるからなのか、よく分からなかった。
「あとは、清掃、楽器類…大きなイベントなどの進行を主にやらせていただいています」
「イベント…?」
私が首をかしげながらに聞くと、ミルトさんは「また近くなったらお話します」と笑いながらに言った。
「俺は社交関係と、怪我とか病気とかを治す事、乗馬、あと菜園とかもやってる。麗華は一度も菜園に興味を示したこと無かったけど」
頬を上げて「ははっ」と笑ってみせるへクターの横で、エリックが不思議そうに「え?」と声を出した。
「「え?」って…?」
「いや、麗華ちゃん花好きだったよ?」
「えっ?!!!」
エリックが淡々と述べた後に、へクターは体を前のめりにして、私を凝視しながら大きな声を上げた。
そして私に向いて、
「何で俺に言わないんだ?!!」
「私に言っても仕方ないでしょ?!」
「……まぁ…。うん…。多分言えなかったんだと思うよ? あの麗華ちゃんだし」
「……ああ。なるほど」
なんかすごい扱いされてますよ? こっちの世界の麗華さん。「あの」って。「あの」って何ですか。
「で、俺はさっき言った通り、毎食担当してまーす。あと、武術とか、たまにデザートとか…かな?」
「国際的なものや歴史的な知識、服の仕立て、洗濯が主です」
「ねぇいつもはやすぎると思わなぁい?」
エリックが首を傾けながら、言い終わるか終らないかで、ルーファスが続けざまに言ったので、エリックは引きつり気味の顔でルーファスに向く。
「…おおまかではありますが、こういったところです」
ミルトはそれらを見ながら、表情を崩さずに私に言った。