デジタル世界に迷い込んだ選ばれし8人の他にあと二人いた?
第6章 バラバラになった仲間と目指せスパイラルマウンテン
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「あまり無理すんなよタケル」
「うん!お兄ちゃんこそ無茶はしないでよ。」
この旅でタケルは成長した。あのタケルが俺の心配までするようになったのだ。そんなタケルを見て、少し寂しいような感じがする。喜ぶべきなのに。
「‥‥‥俺は‥‥なんなのだろうな‥‥‥‥」
もう時期暮れる海をながめながら呟く。
「ヤマトさんでしょ?」
振り返ると小姫ちゃんが手に水筒を持って立っていた。
「はい。お疲れ様ヤマトさん」
俺に水筒を渡す。
「い、いや。それはタケルにやってくれ。」
「今タケルくんにやってきたところでこれはヤマトさんの分ですよ」
確かにそれは俺の水筒だった。小姫ちゃんは俺の隣に座る。
「‥‥‥‥‥タケルくんのことですか?大丈夫ですよ。私はタケルくんよりもヤマトさんの方が心配です。」
「‥‥‥‥俺?」
「‥‥‥秋くんに似てるんですよヤマトさんって。」
少し顔を曇らせる小姫ちゃん。
「秋と?」
「自分が守らなくちゃ、支えなきゃって思ってるでしょ?」
俺は目をそらした。図星だった。
「私たちの話をすると、秋くんのお母さんと私のお父さんは結婚するんです。それで秋くん他人を拒絶するようになっちゃって。その分私を人形のように扱うようになったんです。」
秋と義理の兄妹だとはしっていたが、そのような家庭環境だとは知らなかった。
「私体が弱くて死んだお母さんと同じ病気でいつ死ぬかも分からない。そんな私を秋くんは寂しさを紛らわすいい人形だったんだと思います。」
「そんなこと」
「ないって言いきれますか?私に対する秋くんの異常さにはヤマトさんももう気づいているでしょう?」
小姫ちゃんがいない時、取り乱し方が半端では無かった秋の姿が目に浮かんだ。そして自分。タケルがいない時俺は‥‥‥‥‥‥。
「‥‥‥私はいつ死ぬかわからないけど生きてます。」
寂しそうに笑う小姫ちゃんに俺は何も言えなかった。
「タケルくんは一人の仲間であり、弟です。自分を犠牲にする必要なんてないんですよヤマトさん」
俺より年下なはずなのにやけに大人びて見えるその姿に俺は胸が苦しくなった。
「‥‥‥小姫ちゃんは人の傷を突くね」
「えへへ。たまには直球で言わないと伝わるものも伝わりませんから」
と小姫ちゃんがそっぽを向いたので、俺はその隙に涙を拭いた。