第3章 知られたくない
私たちは、玄関の方へとつながる渡り廊下を、二人で並んで歩いている。
「「行こ」って…いきなり、どういう……」
「あれ? 昨日言わなかったっけ? 待ってるって」
私は「さっきのは「待ってる」とは言わないです。」とため息交じりに言うと、少しだけ祥太さんから離れた。
放課後の学校。廊下にはそれなりの人が歩いたりしていて、まあ、それは特別なことじゃないんだけど……。
「何で離れるの?」
「何で近づくんですか!」
異常なほどに私と祥太さんには視線が集まっていた。
私が人とかかわらない奴だってことを知っている一年生なら、こちらを見てくるのも分かる。しかし、視線をよせてくるのは一年生にはあまり居なく、二年、さらには三年生が、多くこちらの方をチラチラと見てくる。
しかもその視線は、私に向けられるような嫌な冷たい視線ではなく、友達に彼氏彼女が出来たかのような、若干冷やかしの入ったような、祥太さんに向けられた微妙に温かな目線だった。
「なんでこんなに見られるんですか?」
「えー…何でだろーな」
「知らないですよ……ってこっちに近づかないでください!」
私が離れるたびにすぐに距離を縮めようとする祥太さん。お願いだからそんなに近くに来ないでほしい。それは『これ以上私にも視線を集めさせないで』というものかもしれないし、そうじゃなくて違う理由の……
「なんでそんなに離れるの? …あっ。恥ずかしいの?」
「ち、違いますよ!! 何でそうなるんですか! ///」
たぶん、図星を言われて、私は顔を真っ赤にしながら言った。