第3章 知られたくない
青空の下。和気あいあいと、楽しそうに運動をする高校生たち。今の単元はテニスで、会話とともに、黄色いボールが飛び交っている。
「…はぁ」
そんな中、会話もせずただ黙々とボールを打ち続ける私は、小さくため息を吐いた。
昨日は、あの祥太とかいう人と、あーだこーだと話しているうちに、それなりの時間が経ってしまっていて、お母さんが早く帰ってくるということを、完全に忘れていた。そのせいで、帰った時にはひどく叱られ、それで………。
そう考えた途中で、お腹の辺りにそっと触れた。
―――だめ。考えちゃいけない―――
すぐにそこから手を離して、気持ちを入れ替える。
―――今日も、いつもどうりに過ごすんだから―――
けど、その時に脳裏に浮かんだのは、あの祥太という人の顔だった。
昨日の彼の言葉。
『また明日会おうよ』
『えっ?』
『待ってるから。じゃあね!』
そう言って、すぐに走って行ってしまった。けど、なぜだろう…。すごく、嬉しかった。
「いや、そんな。別に嬉しいとか……」
小声でボソッと言ってみると、さらに「嬉しい」という気持ちが強くなっている気がして、恥ずかしくなって私はほほを染めた。