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ありがとうが言えなくて

第2章 どうしよう


 祥太side

 痛い。
 左ほほがヒリヒリとして、削げていないか心配になるくらいだ。
 「すみません」と謝り続ける彼女は、俺が「可愛い」と言うと、真っ赤な顔で俺のほほを叩いた。
 …ツンデレなのかな。


 理花side
 
 顔の火照りがまだ引かない。ドクドクと速くなっていく行く鼓動は、私の心を駆り立てている感じがする。
 『可愛い』
 なぜだろう。その言葉を聞くと心がズキッと痛む。何か昔にあったと思うのだけど「思い出すな。思い出すな」と何かが私に言ってくる。
 「すみません」と謝りながら、私はそんなことを考えていた。
 「まあ、全然大丈夫だから。とりあえず…まあ、ごめん」
 「いえ…私もすみませんでした。気色悪いからってビンタしちゃだめですよね」
 「さりげなく俺の心をえぐるのやめよっか」
 彼は「あぁ」と続けて、ニカッと笑った。
 「俺、神居祥太。二年生。同じ学校でびっくりしたよ」
 「え? あぁ、はい。えっと、鳥飼理花です。一年です」
 よくよく見てみると、彼は私と同じ学校の制服を着ていた。そして、胸元のポケットにあるラインの色は、二年生を表す青色。さらによく見ると、鼻筋の通った中々のイケメンであることも発覚。サラサラと揺れる茶髪は丁寧に整えられ、それなりの美意識があるようだ。
 「え? 何? 何か付いてる? それとも見とれてんの?」
 「ちちちちちちっ違いますよっ!!」
 「思いっきり図星じゃん! って痛い!」
 私が肩をビンタすると、彼は「ツンデレじゃん」と声に出して笑った。

 そして私はもう一度ビンタをした。
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