• テキストサイズ

ありがとうが言えなくて

第1章 出会い


 今日も今日で、同じ一日になる。
 同じ時間に起床し、同じ時間に家を出て、同じように授業を受け、同じように家へ帰る。いつもいつも。一寸たがわずに日々を過ごす。
 今日も今日で、同じ一日になる。今日もその一日だと、私はそう思っていた。
 ―――少し前までは―――

 
  数十分前
 『今日はお母さんが早く帰ってくるから、急いで帰った方がいいかな…』
 そんなことをかんがえながら、呑気に通学路を歩く。
 初夏のこの季節。学校の衣替えはまだ行われてなく、Yシャツではそれなりに暑く感じる。
 首元の第一ボタンだけを外して、私は歩く速度を少し早めた。
 その時だった。
 「きゃっ!」
 「わっ!」
 速度を上げた途端に、肩からだれかにぶつかってしまい、その反動で後ろへ飛ばされる。硬い地面に強く下半身が叩きつけられ、痛みに顔をしかめた。
 「ごめん! 大丈夫?」
 私がぶつかったのであろうその男の人は、すぐにこちらへ手を差し伸べて「立てる?」とずいぶん心配そうに声をかけてきた。あ、男だったんだ、道理で飛ばされ…。
 ん…? 手を差し伸べて…?
 「…っ!!!」
 私はきっと赤面しているであろう顔を、すぐさま横にして「大丈夫ですっ」と自分の手をぎゅっと握った。
 「そう?」
 そう? じゃない! あんた自分がどういう行為してるか分かる?! やられてるこっちが恥ずかしいよ!
 「だだっ大丈夫です。すみません」
 そう言って、私は立ち上がろうとする。
 しかし、くじいてしまったのか、右足に力が入らず、フラッと倒れそうになってしまう。
 「えっ、おっとっ」
 すぐに抱き抑えられる私。はぁ、身体能力なさす…。
 ってそうじゃなくて!!
 「んなななななななっ! ///」
 「あっぶなかったー」
 私を抱きかかえたまま、その人はニッと笑った。
/ 31ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp