【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第14章 五日目 夜 (きもだめし) 後編
「足、痛いのか?」
帰り道、背中の立花が何も言わないので、
菅原が心配そうに聞く。
「ちょっとだけね。でも平気。」
「大丈夫大丈夫。捻挫だよ。戻ったら湿布はってやるから。」
「うん。」
菅原は少し歩く速度を遅めて、みんなと距離をとってから話し始める。
「どうかした?元気ないな。」
「……。」
立花は何も答えず、菅原の肩に乗せた手に力を込めた。
「こうちゃん……。」
「どしたー?ちょっと疲れたか?」
「……。」
言葉が続かない。
(こうちゃんに大切な人ができたら、
幼馴染は終わるって分かってる。ちゃんと分かってるけど、
そのときまで、まだしばらく時間があればいいと思ってる。
私は、こうちゃんの幼馴染だけど、やっぱりそれだけなのかな
それ以上を望んだり期待したり欲しがったらダメなのかな。
やっぱりこうちゃんは、潔子ちゃんのこと……。)
喉まで出かかったそれらの言葉は、音にならずに、
静かに胸の中に落ちて行った。
「合宿も明日で終わりかー。どうでしたか?美和さん。」
何も言わない立花に、菅原は問いかけた。
「うん。楽しかった。こうちゃんは?」
「すっげー楽しかった!
あ、でも負けっぱなしだからなー。明日は勝って終わりたいな。」
そう言って菅原は笑ったので、
立花もつられて少しだけ笑った。