【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第14章 五日目 夜 (きもだめし) 後編
「折れてはなさそう、かな……。」
菅原は少しほっとした声を出して、立花の顔を見る。
(あ、泣いたな……。)
そこに涙の跡を見ると、
菅原は立花を後ろから抱えるように降ろした。
「赤葦、ありがとな。こいつ俺が引き取るわ。」
「あ、はい……。」
立花は赤葦の背中から降りて、懐中電灯を返す。
「ありがとう。」
「いえ。」
赤葦はそう答えることしかできなかった。
「あの、本当に、ありがとう。」
立花はもう一度、小さな声で言った。
赤葦はその表情に息を呑んだ。
(本当に、勘のいい人だ……。)
「よいしょ…っと。相変わらずみーは軽いなー。
もっと食えよ。」
立花を背負って菅原が冗談ぽく言う。
「うるさいなー。これが私の標準体重なの。」
立花がなんの迷いもなく甘え、笑っている姿に、
赤葦は嫉妬よりも諦めにちかい感情を覚えた。
「よし、赤葦も行くべ。」
「あ、はい。」
三人で出ていくと、立花は日向とリエーフに謝られ、
赤葦は黒尾に謝られた。
「もういいんです。」
赤葦は黒尾に一言そう言った。
「結局花火できなかったなー。」
「うん。しょうかないけど。」
赤葦たちの後ろで、日向とリエーフが少し残念そうに話した。