【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第14章 五日目 夜 (きもだめし) 後編
赤葦は、立花を背にのせて、なるべくゆっくり歩いた。
(ずるいな。)
心の中でそう思う。立花は何も言わない。
「あの時木兎さんが言ったこと、覚えてますか?」
立花は少し考えてから口を開く。
「LINE教えてって言われた。」
予想外の返事に、赤葦は思わず声を荒げる。
「は?あの人そんなこと言ったんですか図々しいにもほどがありますね。
忘れてください改めて厳しく注意しておきます。」
「あ、うん。もういいよ。あのときのことは……。」
立花が小さく頷いて言う。
赤葦は一度大きく息を吐いてから
「そうじゃなくて、あのとき木兎さん、
俺が、その……立花さんのことを、気にかけてるとか言ってたと思うんですけど、
覚えてますか?」
「……うん。でもそれも」
「そのことなんですけど」
赤葦が意を決した言葉は、しかし最後までたどりつくことなく、遮られた。
「あ、いたいた!大丈夫か!?」
二人の目の前に菅原が現れた。
「こうちゃん!」
立花の明るい声に、赤葦は唖然とする。
「やっぱり二人一緒だったのか。
どうした?歩けないのか?」
菅原が肩で息をしながら聞く。全力で走ってきたらしい。
「階段から落ちて、足をひねったらしいです。」
赤葦のその言葉に、菅原は目の色を変えて反応する。
「ちょっと見せてみな。どっち?」
「左。」
背負われた立花の足を迷いなく触り、ジャージの裾をめくる。
その様子に、赤葦は自分との差を見せつけられた気がした。
幼馴染らしいですよと山口言っていたのを思い出す。