【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第11章 四日目 昼 (第三体育館組、やらかす)
「!?」
立花は精一杯もがくが、
木兎の力にはまったく敵わない。
(助けて、こうちゃん…!)
心の中でその名を呼ぶ。
「暴れんなって。ねえ、お前さ、彼氏いんの?
烏野の副部長と仲良いみたいだけど。」
「ちが、う……。
こうちゃんは……そういうのじゃ、ない。」
抑えられた口でもごもごと返事をする。
「へえ。じゃあ連絡先教えてよ。
LINEだけでいいから……。」
「木兎さん!何してんですか!?」
木兎の言葉をさえぎって、
何者かが二人の間に割って入った。
ようやく木兎から解放されて、立花はずるずると壁に寄りかかったまま座り込んだ。
「あ、赤葦!?」
「大丈夫ですか、立花さん!」
「……。」
何も答えずにうつむいた立花の目から涙があふれた。
(やばい、泣いてる場合じゃないのに。
はやく、体育館行かなきゃ……。)
しかし思いに反して涙と震えは止まらなかった。
「え!なんで泣くの!?俺のせい!?
ちょっとまって、ちがうちがう。俺そんなつもりない!!」
慌てる木兎に、赤葦はそっと耳打ちする。
「木兎さん、とにかく今すぐみんなのところに戻ってください。
そしてこの事は絶対誰にも言わないこと。分かりましたね。」
「え、でも俺……。」
事と次第によっては大変なことになる。
赤葦はそう判断して木兎に言い聞かせるようにゆっくり話す。
「今ここであなたにできることは何もありません。
お願いですから言うとおりにしてください。」
そんな余裕のない彼の表情を見て、木兎は大人しくその場を後にした。