【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第7章 一日目 夜 (雨と猫と彼)後編
その時、倉庫の中に、扉の開く音と第三者の声が響いた。
「おーい!迎えに来たぞー!無事かー!?」
「こうちゃん!!」
立花が声の主に向かって叫ぶ。
菅原が懐中電灯で照らしながら近づいて言った。
「月島!お前まさかと思うが」
「してませんよ何も。立花先輩にも聞いてください。」
立花が笑顔でうんうんと頷いているのを見て、菅原はほっと胸をなでおろす。
「こうちゃん、見てみて、猫がいたの。この子を追いかけてきたら閉じ込められちゃって……。」
無邪気に話す立花に、菅原は珍しく厳しい口調で言った。
「なにのんきなこと言ってんだ!
清水も谷地も心配してたぞ。戻ったらちゃんと謝るんだぞ。」
その声にびっくりして、思わず猫を離してしまう。
「……ごめんなさい。」
「あと、月島も悪かったな。よく叱っとくから。」
「あ、いえ。僕は別に……」
怒られて落ち込む立花と、親のような振る舞いの菅原に、月島はあっけにとられる。
菅原は持ってきたタオルでガシガシと立花の頭を拭きながら
まだ説教をしている。
「まったく、こんなに濡れて。
風邪ひいたらどうすんだべ。
そもそも、一緒に閉じ込められたのが月島じゃなくてもっと悪い奴だったらどうなってたと思うんだ。
一人になるなって言ったよな?だから俺はこういう……。」
「ちょっと、菅原さん、そのくらいで……。」
思わず月島が止めに入ると、
菅原もはっと我に返って立花の顔をのぞきこむ。
「……。」
立花はかけられたタオルを顔に押し付けたまま何も言わない。
肩が小刻みに震えている。
月島はすぐに状況を察して、その場から立ち去ろうとする。
「じゃあ、僕、先に戻るんで。
立花先輩、DVDありがとうございました。」
「あ、月島!ほんとごめんな!」
菅原は月島にもタオルを手渡す。
それを手にして月島は倉庫を後にした。