【ハイキュー】ひとなつの (poco a poco2)
第6章 一日目 夜 (雨と猫と彼)全編
「立花先輩、携帯持ってないんですか?」
「あ!そうだよね。ちょっと、この子お願い。」
立花は猫を月島に託して、
ポケットから携帯を取り出す。
暗闇の中で携帯の画面が眩しく光る。
「こうちゃん……だめ、出ない。」
「選手はみんな自主練してますからね。清水先輩とか谷地さんの連絡先は知らないんですか。」
立花は首を横に振る。
「二人とも用があるときはいつも近くにいたから。
まさかこんなことになるなんて思わなくて。
あ、そうだ。私の携帯から月島君の携帯にかけて、誰か出れば……。」
「僕の携帯は部屋です。
さっきも言いましたけど選手はみんな自主練で部屋にいないと思います、
万が一誰かいても、他人の携帯鳴ってるからって出るとも思えない。」
「そうだよね……。」
どうしようどうしようと少しパニックになった様子の立花に、月島は冷静に言った。
「とにかく、菅原さんが着信に気付くのを待ちましょう。あの人ならきっと異変に気づいてくれます。
それと、外に出ることは誰かに言ってきましたか?」
「うん、潔子ちゃんと仁花ちゃんには言ってきた。」
「じゃあその二人が、先輩がいつまでも戻らなければきっと探しに動きますよ。
念のため、菅原さんにメールも送っておいたらいいんじゃないですか。」
「そう、だよね……。うん。」
すこし落ち着きを取り戻す立花。
菅原にこの状況を知らせるメールを打つ。
しかし、震えて思うように動かない。
手だけではない。身体全体が強張って震えていた。
雨に濡れて寒いからか、それとも不安と緊張からか、あるいはその両方か。
「はあ……。」
メールを送り終わって
立花は力なく壁に寄りかかる。