第17章 優しい嘘、切ない嘘
「恵...花火見れる場所、確保してくるって」
「そっか...」
そういえば、7時半から花火があるんだっけ...
なんだか...
急に避けられている気がして、自然と溜息が出てしまう
勇介はそんなあゆの様子に頭を掻くと、袋からイチゴ飴を取り差し出した
「...これ」
突然目の前に現れたイチゴ飴にあゆは目を丸くする
「リンゴ飴が王道だけどさ、俺イチゴ飴の方が好きなんだ。椎田にあげる」
明らかに様子が変なのは自分でも分かってる
それでも何も聞いてこない山口君の優しさに、今回も救われたと...
あゆは胸が熱くなるのを感じながら、お礼を言った後イチゴ飴を受け取った
「恵のフランス行き。引き止めることが出来たのは椎田のお陰だって、駿が言ってた」
「そんなことないよ!むしろ武本君の方がたくさん頑張ってたし...」
山口君と目が合って、思わず言葉を詰まらせた
(なんて...)
なんて優しい目で見てくるんだろう
「椎田は自分のこと過小評価しすぎだよ」
「そうかな...?」
首を傾げた私に山口君は頷くと言葉を続けた
「そうだよ。俺...1年の時から恵と駿のこと知ってるけど、恵は今と全然違ったんだよ。なんていうか...冷たいっていうか」
その頃のことを思い出しているのか...
山口君は遠くを見るような素振りを見せると、笑みをこぼした
「成績優秀で人望もあって、バスケでは負けないけど...運動も恵の方が勝ってて。隙が無くて完璧な奴だなって思ったけど、なんだかずっと無理してる感じがしてたんだ」
(山口君も、雨宮君の心の奥の闇に気付いてたんだ...)
優しくて気遣いも出来て、近くの人のことをすごい理解してて
(山口君も十分完璧な人だと思うけど)
そんなことを口に出して言えるはずもなく、あゆは勇介にバレないように微笑んだ