The color in the darkness[D.G]
第1章 出会い1
「でも、最後まで見られなかったから、私ちゃんとはできてない……」
なでる手が頬まで滑り落ちてきてつかまれ、すごい力で横に引っ張られる。
「コ、コムヒ!! いひゃい!!」
涙が出そうなほど痛い。止めてほしくてわたわたするが、コムイはやめてくれなかった。見えなくてもわかるコムイは怒っているのだ。
「君は優しい子だ、でも、悪い子でもある」
悪い子と言われ私はしゅんとする。
「限界になるまでやってはいけないとあれだけ言ったじゃないか」
とがめる声に私は少し眉を寄せる。
「で、でも……い、いひゃいいひゃい!!」
「でも、じゃナーイ!! ……まったく」
コムイの感情が悲しく濁る。コムイにもわかっているのだ。あれは必要なことだった。どんな代償があってもやらねばならないことだったのだ。
「君は本当に悪い子だ」
言ってコムイは私の手を包み込んで、自分の頬に当てた。
コムイの体温があたたかくてうれしくなる。自分に兄がいたらこんな感じなのだろうか。
「えへへ、でも本当によかったー」
「まったく君って子は」
コムイは呆れているかもしれないかもしれないけれど、今はきっと笑っている。
こうとして二人して笑いあっていると先ほどの緊迫した状況が嘘のようだ。こんな笑っていられる日々がいつまでも続けばいいのにと私は願った。
コンコン、と壁と叩く音がした。
「おい、ちょっといいか」
声の先に顔を向けるとまばゆいと感じるほどの存在がそこにいた。見覚えがあるきれいでまっすぐな光。
目がくらみそうな光が私に当たっている。私は彼だとすぐに気が付いた。
彼の光に疑問の色が灯る。
「誰だ? そいつ」
これが私と彼、神田ユウとの出会いだった。
この時私は少なからずときめきを覚えていたけれど、それだけではなかった。
同時に抗いきれない別れを感じていた。
けれど、私は彼に出会えたことが純粋にうれしかった。
私は笑顔で彼に告げる。
「初めまして、神田。私はアリーシャ、アリーシャ・ベルナロイです」
彼の光は不審そうな色をした。けれど、関係ない。私はずっとこの出会いを待っていた。
私と彼の出会いと別れが今始まった。