• テキストサイズ

The color in the darkness[D.G]

第1章 出会い1


無機質な部屋の中で一つの椅子がぽつんと存在していた。私はその椅子に沈み込むように座っている。
私はぼんやりとした意識の中で、宙に浮かぶものを見つめていた。
力なく、だらんと頭をもたげて私が見つめる先にあるのは恐らく世界。

おそらく、というのは私は地球という存在が本当はどういう形をしているのかわからないからだ。
丸いのか、四角いのか、楕円なのか私は知らない。色もわからない。それどころか私は何も見たことがない。
なぜなら私には視力がないからだ。

だから、この先に見えている地球は私の想像の中の産物であって真実ではない。
この椅子に座っているというのも想像だ。実際の私はどこかに横たわらせられているはず。そう、ここは私の考えた空間でしかないのだ。

科学者たちはそのことを”夢をみている”というけれど、こんなにはっきりとした夢があるのだろうか? この疑問には誰も答えることが出来ない。私の夢を可視化することはまだできていないから。
この力は神がもたらしたものだ。


ある日、彼らを母が連れてきた。
彼らは私を神の使徒である可能性があると言ってきた。知っていた。私の能力は戦闘には不向きであったけど、情報収集に関して異常に優れていた。人の感情や体の不具合や行動の意味、大きくは世界中で何が起きているのか知ることが出来た。

だから、私は彼らが来ることに別段驚くことはなかった。
この世界で何が起きているのかも知っていたから。
だから私は何も疑問も口にすることなく彼らの手を取った。ただ利用されるだけだと知っていたけれど、貧しかった私の家には必要なことだったから。

――それに……。

気が付くと頭の中で想像した地球に小さく光る点が明滅を繰り返している。エクソシストたちだ。
彼らの輝きはとても美しい。イノセンスがそうさせるのか見ていてとても心地いいのだ。
その中でも私は一番気に入っている輝きがある。

それはひどくまっすぐで誰にも負けない強さがあった。そして濁りがない。

人の感情は様々な色が混じっている。人が一概にこういう人間だと断言できないように、色が溶け合っているのだ。大抵の人間はあまりきれいな色はしていない。
私が人の感情を色と表現しているのは、それが一番妥当だからだ。見えていないというのにこれはとても皮肉な表現だと自分でも思う。けれど、それが一番ぴったりとくるのだから仕方ない。
/ 5ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp