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【フジリュー版】今日も私は空を見上げる。【封神演義】

第1章 春 


その声に誘われて 目を 開く

遠く西の方はまだ朝が来ていないのか山間は白く靄ががり、空にもまだ紫色の夜の気配が残る雲が見える
所々に大きな建物が見える
「・・・きれい。」
「だろ?俺様も朝のパトロール時の空が一番好きだぜ!!」
真横で彼が屈託のない顔で笑う。…何だ、よく見るとイケメンじゃないか、っていやそんなことない。こんな無骨なやつは父さんみたいじゃないし。
変な気持ちが湧いてきたのでさらに遠くを見る。
遠く遠い地平線の彼方
「・・・・・あっちが西岐なのかしら。」
ふと声がもれた。
「ああ、この国で一番良い人間が治める最高の場所(くに)だ!」
私の声につられて彼も弾んだ声を返しながら西を見る
「西岐は人望厚く知略に高い西伯候 姫昌様が納め土地も豊かで平和だと聞くわ。」
「だろう!俺様もそういう名のある
なぜか自分ごとのように喜ぶ彼の話を聞かずに私は大きく息を吸って話し続ける
「ここは朝歌に近くて時折徴兵や人材確保のために人々が連れて行かれる。今は水不足に人々は喘いでいるし、仮に雨が降っても作物が取れてもその殆どは朝歌に吸い取られてしまうわ。」
「・・・・。」
「父も母も朝歌み連れて行かれたっきり音沙汰がないし、この町では私は慰み者の噂まで立っている・・・もう、この町に私が居る意味は無いわ。」
徐々に赤く染まる世界を彼は静かに見下ろしていた。

父さんと洗い梁に行った川
母さんと買い出しに行った市場
家族皆で笑いながら住んだ家

どれもが愛おしくて、どれもが眺めるだけで辛くなる。
それを通り越して彼は飛ぶ

「ねぇ、雷震子様。オンナの私が空の兄弟に入れないのは良く判りました。だから貴方にお願いがあります。」

もう、はるか後ろにある町を一瞥してから彼の顔を見れば彼も私の目を見つめていた
ああ。私は何時からこんなにも泣き虫になったんだろう。拭いたくても抱えられていて吹く事も出来ないや

「一人は、寂しいんです…友達に、なって下さい。それで私を・・・西へ連れてって下さい。」
「・・・・・オウ。」

浅黒い肌に顔を埋めて私は泣いた。
涙は風に乗って遠くへと飛ばされ落ちていく
思い出の町はもう見えないし、帰る事もないけれど

「………泣くんじゃねぇ!チョーシ狂うンだよ!!!」

世界は広くて輝いていて

「は”いっ!」

ガシガシと頭を撫でてくれる優しい「彼」がいる。
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