【フジリュー版】今日も私は空を見上げる。【封神演義】
第1章 春
そういえば彼は人に好かれそうなカラっとした笑みを浮かべて親指を立て
「いいっていいって。俺様は雷震子、空の兄弟って義賊の頭で正義のヒーローだ!!」
ドンと自信満々に教えてくれる
「…ご丁寧にありがとうございます。所で雷震子様・・・一つご質問してもよろしいでしょうか?」
「ん?なんだオンナは空の兄弟には入れないからな!!」
得意げな顔で語る彼を横目に私は町並みを見やる。
(・・・・・そろそろ皆が起きてくるな。水瓶…は割れてるから駄目だとして、反物は…まだ大丈夫だな。・・・・・今日はおとなしく帰るか)
気付かれないように小さくため息を吐いてから
「今の諍いで体を傷めてしまいました。もし宜しければ家まで送ってはいただけませんでしょうか?重ね重ね申し訳ありません。」
深々と頭を下げてから彼の眼を見つめた後に風のせいで割れてしまった水瓶に視線を移す
(あー。我ながらセコイわなーw)
「ア”誰が・・・チッ、壺割っちまったか。しょうがねぇ…ホラ。」
私の視線の意図に気付き面倒くさそうに頭を掻いてから彼はその無骨な手甲をはめた手を差し出してきた
「早く掴まれよ、夜が開き切っちまうだろ!!!」
「いや、私そんな体力ないので掴むだけだと途中で落ちます。てかそもそも反物と商品があるので掴まれません!」
(こちとら生活かかってんですよ、助けてもらったのは嬉しいけどもう帰って作業しないと明日のおまんま食ってけねーよ!)
若干素に戻りながらも此方の意向を伝えれば目の前に差し出されていた手がスッと消え
「~ったく面倒くせぇオンナだな、ほら・・・よっと!!」
気付けば彼の肩に俵の用に抱えられていた。
「ひゃぁ?!!ちょっと、前で抱きかかえるとかないの?!!」
「ウルセェ!!んなナンパな事はこの雷震子様は絶対やんねーぜ!!!」
バサッ バサッと大きな羽音がしたと思えば不意に感じる初めての感覚に遠ざかる地面
「くぁwせdrftgyふじこlp;@???!!!!!」
「暴れんなよ、このアマ!!!前見ろ前!!!」
耳元で鳴る風の音に体は勝手に震えだし私はまた強く目を閉じ耐えるしかなかった
「嫌嫌!怖い、絶対無理!!」
「良いから開けろ!そうやってオマエは怖い物から全部逃げんのか!」
その言葉が雷撃のように心を突き抜ける
(だって、本当はもう…気づいてた。父さんの事も母さんの事も。でも怖かった。)
