第13章 襲撃
.
「俱利伽羅っ!」
横やりを入れる如く、次に燭台切の太刀が鈍く廣光の刀をようやく弾き飛ばした。
「……忌々しい」
廣光は明らかに舌打ちをかますと、そのまま体制を整えるかのように庭へと飛び退いた。
それぞれが廣光と、
ようやく対峙する形となった。
「なあ、お前なら俺の寂しさも苦しさも分かってくれるだろう?その手で直にこの刀が納められていた葛籠に触れたのだから」
それは、確かに湯女への投げかけだった。
「ずっと欲しかった、焦がれていた、政宗公……だが、あの人は俺だけのものじゃなかったんだ。俺だけが……俺だけがあの人の刀で良かったのに、それなのに……」
『とんだ傲慢ね。
大好きな伊達政宗が自分のものにならなかったからって、その血筋の人間を手に入れたらあなたの欲は満たされるとでも言うの?
笑い話にもならないわ』
「はッ、だからなんだ? 輪廻転生。お前の中にあるのは政宗公の魂そのものだ」
ゆらり、廣光の瞳孔が開く。
「それを俺だけのものに出来たなら……俺は今度こそ! あの人と共に死ねるんだ!!」
『はあ? さっきからうるさいわねぇ。いい?一回しか言わないからよく聞きなさい』
湯女は三日月の手から離れように立ち上がり、気高く胸を張る。
そして、声高らかに告げる。
『私は伊達湯女。伊達政宗でも、先祖返りでもなんでもない……ただの湯女!
誰のものでもない、私は私だけのものよ』
力強いその声は、その場に居る誰もの目を釘付けにする。
廣光が表情を歪めるとほぼ同時に、大倶利伽羅は彼の刀を薙ぎ払う。