第1章 竜頭
白銀の刃が宙を舞い翔る。褐色の肌が太陽の光を浴び、彼が上着を脱ぎ捨てれば腕に巻き付く倶利伽羅竜の刺青が姿を見せる。牙を研ぎ、相手の肉を噛み千切らんとするかのように、大きく口を開け襲い掛かるかの如き鋭い剣筋が相手の肉を骨を絶つ。男は横目で見送ると、刃に絡み付いた生臭い血を一振りし、払った。
「大倶利伽羅! 援護を頼む!!」
「……馴れ合いなら他所でやれ。鬱陶しい……ッ」
仲間の声に呼ばれ、言葉とは裏腹に大倶利伽羅は再び柄を握り直すと砂埃を立て地を蹴った。槍を構える敵を前にしても、大倶利伽羅が怯む様子などない。恐れなど最早この場にいる全ての者達に、あるはずもなかった。迷いのない剣筋が激しい衝突を見せ、敵の刀は折れ肉体は地に落ちた。
大倶利伽羅は背後を追うように走ってくる者の気配を捉え、ちらりと後ろへと視線を投げた。
「倶利伽羅! 一人じゃ危険だ、僕も行こう」
「光忠か……。ふんっ、勝手にしろ」
「ふふ、格好良くいこう!!」
大倶利伽羅は光忠と呼んだ男の存在を気にする素振りも見せず、目の前で槍を構え力強く突きにきた相手の刃を己の刀で弾き軌道を変える。その隙に大倶利伽羅の背後に控えていた男――燭台切光忠が金色の片目を光らせて、下から上空を切り裂くように刀を振り上げた。すると、敵の槍は空高く舞い上がり燭台切の一撃で武器を手離す。