第8章 伍
そしてまた気配を感じた。
斬撃をまた繰り出そうと刀を構えると
「狐織ぃぃぃぃぃ!!!!」
後ろにスコップを放り投げ、目の前から平腹が抱き着いてきた。重さに耐えられずに後ろに倒れてしまう。
放り投げられたスコップを掴み、平腹に投げたのは田噛だ。
「やっぱ心配だから田噛と一緒についてきた!!田噛お前のことすっげえ心配してたぞ!!!!っていってぇ!!!!」
田噛が投げたスコップは見事に平腹の背中に突き刺さり、それは腹をも貫いた。
「おいてめぇの声で狐織の頭がいかれちまうだろ、黙れ。」
私を押し倒した状態で大きな声を出すので、確かに頭に響いた。
平腹はすぐさま立ち上がり私に向かって謝罪を言った。
「えぇ!?狐織頭壊れる…!?ごめん!!!!」
「あ、私は大丈夫ですよ。その前にスコップを抜いて下さい。傷が大きくなると治療が厄介になるので…」
「んお?ごめん!!!!」
「忠犬…」
呆れる田噛を他所に、平腹は背中に手を回しスコップを引き抜いた。
「一応包帯を巻くので、こっちに来て下さい。」
立ち上がって、後ろについた埃を払った。平腹は素直に「おう!!頼む!!」と私の前で素直に腰を下ろした。
ポケットの中に予め入っている消毒液と包帯をとりだしたところで、視界の端で田噛が動いた。暫く手を止めて動きを悟られないように見ていると、完全に私の視界から逃げようとしている。これからしようと思っていることを察したらしい。
当たり前といえば当たり前だ。何度も経験したことがあるのだから。手当てではない。
「…田噛さん?」
問いかけるとピクッ、と体を振動させて動きを止めた。まるで悪戯が見つかった子供のような顔をしておそるおそるこちらを振り向いた。どうやら図星だったようだ。
一方平腹はニコニコと楽しそうに笑いながら私と田噛さんを見比べていた。
そしてゆっくり息を吸う。
「…お説教が嫌だからって逃げないでくださいよ?」
「うっ…」
ここで改めて確信した。田噛は説教が嫌いだ。大人しく聞いてはくれるのだが。平腹の話によると「狐織にだけは言い返せねえんだよなー。あの田噛は新鮮で面白えんだよなー。」とのこと。平腹も共に説教することの方が多いが今回は違う。
ガーゼに消毒液を染み込ませて、傷口に軽くあてながら話をつづける。