第8章 伍
「長らくは話しませんよ。一応仕事中なので。
貴方と平腹さんは喧嘩というか、言い合いが絶えないですね。それは三千年以上前から承知しています。言い合いなら良いのです。後々困らないので。あと少し殴る程度でも結構です。
ですが、このように血が止まるのに時間がかかりそうな怪我を負わせるのはやめてください。平腹さんも貴方と負けないくらいありますが。」
「…ん」
無意識にか正座をしている田噛がこくんと頷いた。
包帯を巻き終え、終わったと合図をするためにポンと肩を叩く。伝わったらしく黙ってニヤニヤしたまま上着を手に取り羽織った。
「……まあ、でも私を心配してくれて援助をしにきてくれたのならお礼を言います。あと、先程も。ありがとうございますね。」
予想以上に落ち込んでいるように見えたので、軽く微笑みかけた。すると、青ざめていた顔がじわじわと赤くなっているように見えた。
「…どうしました?具合が悪いのでは……?」
「悪くない…。」
「あー!!あれだよ!!!お礼言われて照れ」
ブォン!!!!
聞こえたのは空気が斬れた音。その音は田噛のツルハシから発せられた音だと気づくのに暫し時間がかかった。
繰り出された斬撃は平腹の顔の横スレスレを通り、部屋の扉を防いでいた机等を破壊した。
「黙れ馬鹿腹」
「…ごめんなさい」
固まった笑顔のまま平腹が声を出した。
そして私は、呆れたような、安堵したような不思議なため息を零した。