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獄都二居座ル狐ノ子

第7章 肆


執務室の扉を四回叩くと、「入れ」と低い肋角の声が返ってきた。
「失礼致します。」
そういって中に入ると、持っていた書類を机に置き、手を組んだ。
そして私を椅子に座った状態から見上げる。
「単刀直入に言わせてもらうと、木舌と連絡がとれなくなった。お前なら、予想がついていただろうがな。」
「…やはりそうですか。」
木舌は酔うとどこにでもひょいっ、と行ってしまう。その勢いで迷子になることも少なくない。獄都は広い、皆で探し回ることもあった。
だが木舌は仕事中には飲まない。
「余程相手が手強いか、それともいたぶられ続けているのか…」
「あぁ、その通りだ。
亡者は最初、何処ぞの古ビルに住み着き多くの亡者を殺していた。それを見て閻魔庁から我々に要請が届けられ、木舌を行かせたのだが予想以上に手ごわかったらしく、南西地区の廃校逃げ込まれたらしい。それきり連絡が取れなくなったのだ。
お前がやるべき事は二つ、亡者を捕まえて、木舌を連れて帰ってこい。
許されざるものには罰を。獄卒の名にかけてな。」
「理解しました。それでは、行ってきます。」
背筋を伸ばし、敬礼をして扉へ向かった。
開けた扉を閉めて早速屋敷の出入口へと向かう。
「…おっ?狐織じゃん!!」
スコップを片手に持ち笑顔で駆け寄ってきたのは、平腹だ。後ろにはツルハシを片手に、もう片方の手に分厚い本を持った田噛の姿が見えた。
田噛は以外にも読書が趣味である。平腹は図書室に付いてきたのだろう。
私の目の前で立ち止まると、元気よく話しかけてきた。
「これから仕事か?」
「えぇ、そうです。」
「はえー。狐織忙しいんだなー。」
「…おい、大丈夫か?」
平腹の後ろをゆっくり歩いてきた田噛が、ひょいと顔を出した。
「大丈夫ですよ。少し忙しいだけですから、ご心配有り難うございます。」
「そうじゃねえよ」
反論した田噛を見て「ふぉ?」と平腹は目をぱちくりさせた。その後すぐに、「あ゙!!」と何かを思い出したかのように声をあげて目を見開いた。
「そうだよ!!狐織前ぶっ倒れてたじゃん!!!!田噛その事言ってたのか!!」
「木舌が受けた任務だろ?…俺もすぐ向かう。」
そう言うと執務室へと颯々と向かい、その後を「おい待てよ!! …じゃあな狐織!!」と平腹が小走りで追いかけた。
二人の後ろ姿を見ると、何故か心の奥がじわりと暖かくなった。

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