第3章 煌帝国
腕を引かれるままに建物へと入り、辿り着いた先は――
きらびやかな装飾品が多数ある個室だった。
中に入るのかと思ったけど、そうではないようで。
青年は扉の前で立ち止まると数度ノックしてから声を発した。
「姉上、白龍です。少々お時間よろしいですか?」
透るような真っ直ぐな声音で紡がれた言葉に、扉の向こうから直ぐに返答が返ってくる。
「白龍? 構いませんよ、中へ入りなさい」
入室の許可が下りると白龍と呼ばれた青年は扉を開け、直ぐに室内へと入る。
私も腕を引かれるままに、後ろに続くように入ると扉は軋むような音を立てながら閉まった。
「失礼します、姉上。業務中にすみません」
姉上――そう呼ばれた方は文字通りこの青年のお姉さんなんだろう。
長い黒髪と優しげでいて凛とした佇まいは通ずるものがあると、そう思えた。
「大丈夫ですよ、丁度一息ついたところでしたから。それで、そちらの方は?」
書類から目を離したお姉さんと視線がバッチリと合う。
思わず視線から逃げるように青年の背中へ隠れると、お姉さんは困ったような声音で、言った。
「あら、怖がらせてしまったかしら」
そう言うお姉さんに青年は「いえ……すみません」と、何故か謝っている。
何だか居たたまれず悪い事をしてしまったような気分になって、その場でギュッと唇を噛んだ。
「この人は、その、信じられないような話なのですが……空から降ってきてですね」