第3章 煌帝国
白龍Saido
瑠花殿を部屋へと案内した後、俺は姉上の元へと足を運んだ。
何故、姉上は瑠花殿を追い出そうとはせずここに置いたのかという疑問からだった。
聡明な姉上のこと、考えあってのことだとは思うが……。
気になるものは気になるのだ。
「姉上、瑠花殿を部屋へ案内しました」
言い、返事がある前に部屋へと入る。
先ほどと同じ椅子に座っていて、部屋に入ってすぐ視線があった。
「有難う、瑠花さんの様子はどうだった?」
「何か耐えるように暗い表情をされてましたが……」
伝えると、姉上は「そう……」と、また考えこんでしまう。
声をかけるのを躊躇ってしまい、結局疑問を口にしないまま部屋を出た。
「俺の意気地なし……」
自分が情けなくなって呟くが、余計に虚しさがましただけだった。
「…………」
どんよりとした気持ちのまま中庭へ出る。
気を紛らわせ、平常心を取り戻すため槍を振るうことにしたのだ。
―――――
槍を振るいだして早数刻。日も傾いて来た頃だった。
そろそろ終わりにするか?
考え始めた時、緩やかな風が髪を揺らす。
そしてーー入れ替わるようにして聞こえてきた声。
「凄い…………綺麗」
唐突な褒め言葉。思考が動作が一瞬で停止した。
まさか――と、思ったのだ。
ここに居るはずがない。休んでいるはず――
予想を反して向けた視線の先には瑠花殿がいて。
思わず、勢いでまくし立てる様に言ってしまった。
何故、ここに居るんですか!? と。
だけども返ってきた言葉は何の答えにもなっていなくて。
更なる問を向けようとした時、瑠花殿は近くに立て掛けてあった槍を手に取った。
「瑠花殿……?」
俺はその動作の意味が分からなくて、ただ見つめる。
槍を確かめる様に持つ瑠花殿の姿は凛々しく姉上を彷彿とさせるような何かがあった。
一分と経たないうちに瑠花殿は槍を手慣れた手付きで構える。
そして――
まるで風に乗り舞い踊るかの様に槍を振るったのだ。
力強く、それでいてどこか儚い。
そんな言葉が自然と思い浮かぶような、そんな武闘だった。
武闘が終わると同時、無意識に言葉が漏れる。
「力強く、綺麗だ……」
同じ槍を扱うものとして魅入らずに入られない、そんな一時だった。