第1章 APPLE GREEN
夏も終盤、しかし暑さは依然収まるところを知らない8月の真ん中。
頭上を覆う夜の闇には昼間と代わり真ん丸な月が淡い光を放っている。
地球で言う「お盆」のこの季節、何故か我らが団長は俺とに2週間の休暇をくれた。
「あの神威が休暇なんてどういう風の吹き回し…死亡フラグ?」
「殺しても死なねェだろ。まあ久々の休みだ、楽しむこった」
今日、に連れられて来たのは「夏祭り」。
この時期地球では夜にたくさんの屋台が出てそれを回って楽しむことを「祭り」と言うのだそうだ。
何故か「先に言ってて」と言われ待っていると、普段とは違う姿の。
「阿伏兎!待たせてごめん」
白地に青い花火の絵柄が入ったチャイナドレスのような、いやそれよりずっと爽やかでを引き立てる。
「これ、浴衣って言ってお祭りのときに着るんだよ」
少し恥ずかしそうに話すはいつもより何倍も綺麗に見えた。
「…阿伏兎?え、無視は酷くな…ん」
唐突に触れるだけのキスをする。
「すげえ可愛い」
思わずいつものように頭をワシワシとしたくなるが、せっかく綺麗に整えて髪飾りまでしてあるのでポンポンと軽く叩くだけにした。
「たまのデートだ、何でも好きな物言えよ」
「じゃあ、もう一回キスして?」
…っ!
ああもうこいつは。
どれだけ可愛いんだ。
もう一度キスをするとすかさずが背伸びをして俺の頬にチュッ、とキス。
「よし!あ、綿菓子食べたい!」
照れ隠しか、屋台目指して走り出すの手を握るとも握り返してくれる。
俺は間違いなく幸せ者だ。