第10章 エクストラワン
──その夢すら溝(どぶ)に捨てたのは おい誰なんだよ もう知ってんだろ
正直、ビクッた。
・・・いや、違うな。
ビクッたっつーか・・・なんだ?
言葉で上手く言い表せれねえけど・・・テレビであんなアイドルっぽいキラキラした歌歌ってた奴が、こんなハードめの曲を歌っててマジで驚いた。
どうせあの歌みてぇに王道のアイドルっぽいのばっかを歌ってるんだとばかり思ってたから、凄ぇと思った。
「あら、黒りんじゃない」
「月宮さん」
「珍しいわね、今日って撮影でしょ?
いつもなら寝てるのに・・・」
「あ、いや・・・。
・・・そうだ、月宮さん。この前テレビに出てた女・・・早乙女学園の生徒だったんスね」
「あらっ、もう知ってるの?
ふふふ、あの子ってばモテモテねえ♪」
「嶺二に教えてもらって、LINKで登録してみたんスけど・・・ロック系の曲、聞きたいっつったらこの間投稿してくれたみたいで」
「そうだったの?
な〜んだ、黒りんのリクエストだったのね。先週会った時にシャウト出来てスカッとしたって、清々しい顔してたわよ?」
「・・・凄いっスね、こいつ」
「ふふふっ、私もそう思うわ。
何気ない事とか、ふとした時に思いついちゃうらしいの。この前のテレビの曲もね、その前の日に完成したばかりできちんと歌うのはあれが初めてだったみたいよ?」
「・・・・・・は、?」
「しかも、テレビに映るのも初めてだったのに・・・よ?」
・・・あれで、初めて?
あのレベルを、それもテレビの初出演で?
それを聞いて俺は思わずぽかんとした。
「信じられないでしょ?」
「・・・・・・そりゃ、まあ」
「収録が終わった後、龍也があの子によく緊張しなかったな?って聞いたら・・・なんて答えたと思う?」
「・・・・・・さあ・・・」
「『ハヤトが困ってたし・・・せっかくの番組に穴が空いたら見てくれてる視聴者さん達がガッカリするだろーなって思って。・・・それに、自分の歌いたいように、ありのままに歌ったから緊張とかはしなかったですよ。どっちかって言うと歌えて楽しかったです』・・・ですって!
アタシってば思わず抱き締めちゃったわ!!」
月宮さんがテンション上がってるのは置いといて。
・・・本当、凄ぇな。
このGray∞Noteって。
(ロストワンの号哭/Neru)