第9章 フィアーキング
side レン
エレを寮の前で降ろして、オレは引き続きジョージの運転で実家に向かっていた。
「・・・楽しそうだな、レン」
「・・・唐突だな。
まあ、確かにエレと一日一緒に居られたんだ・・・楽しかったよ」
「安心したよ、いつものデートよりお前が自然に笑えてたみたいだしな」
「!・・・・・・はは、鋭いな」
「惚れたか?」
「想像に任せるよ」
・・・まったく、昔から変に鋭い。
聖川には宣戦布告みたいなマネしたけど・・・正直、驚くほどにエレを前にするとオレは行動に移りやすいらしい。今日だって、本当はキスをするつもりだった。
でもエレが無防備すぎたからなのか、出来なかった。
・・・いや、違うか。
「・・・ジョージ。
オレは恋愛対象に見られにくいのか?」
「、っぷ・・・!
なんだ、いきなり・・・っくく・・・!」
「笑うなよ・・・そんなにおかしいか?」
「く、ははっ・・・!
そりゃお前・・・いつも恋愛に関してなら誰かに相談なんてしないで女子をエスコートしてるお前が、俺に相談って・・・!」
「・・・あんまり笑ってると事故るぞ?」
まったく・・・失礼な執事が居たもんだ。
でもまあ・・・確かにジョージの言う通りだ。
オレが恋愛に関して誰かに相談する・・・なんて、今まで無かった。・・・それほどオレは困っているらしい。
「だが、まあ・・・解らんでもないな。
ああ言う手のタイプはそうそう落ちない。色気より音楽、と言った感じだからな」
「エレは何よりも音楽一筋だからな・・・ああ言うレディは初めてだよ」
「さすがの神宮寺レンもお手上げか?」
「まさか。
・・・ある意味、その逆だよ」
「・・・っくく、本気のようだな・・・」
「ああ・・・オレが思っていたより、な」
今の今まで、レディに困った事なんてなかった。
困らせる事は何度もあったけど、困らされた事は1度も。
大抵のレディなら、オレが愛の言葉を囁くだけで顔を染めてくれる。・・・まあ、それはそれで可愛いんだけどね。
この学園に入っても、それは変わらなかった。
それがオレにとっての日常になっていたし、普通だったから。
・・・そんな中で、エレはオレの日常を裏切ってくれた。もちろん、いい意味でね。
さあ、どうやって振り向かせようかな・・・。