第1章 ニューゲーム
──僕がなんで 歩けてるか
笑ってる君がいるから──
久々に、フルで歌った。
和室で防音効果皆無な所で歌うより、やっぱ設備の整ってる所で歌った方が心地いいや。
この歌は、私にとっての夢をそのままにした。
夢を見るのは楽しい事なんだって意味をこめてる。
歌い終わって、曲が終わる。
ガラス越しの収録ブースを見れば、日向先生が微笑んでオッケーとジェスチャーしてくれた。
がちゃ
「お疲れさん、いい声だったぜ!」
「なんだか聞いてるこっちまで頑張らなくちゃって思えちゃう歌だったわぁ~!」
『、ありがとうございます。
…あれ、一ノ瀬君?』
月宮先生から肩に手を置かれてはしゃがれているのを横目に、何でここに?と首を傾げて一ノ瀬君を見る。
確か隣に居るはずじゃ…。
「、あ…。私は……」
「東椰の曲と歌に釣られたんだろ?」
「わかるわぁ、私だって聞き惚れちゃう曲だもの!」
『そんなに褒めても何も出せませんけど…』
「……ひとつ、聞いてもいいですか?」
『?』
「…なぜ、あんなに楽しそうに歌うのに朝のホームルームでは歌わなかったのですか?」
理解できません、とでも付け足しそうな一ノ瀬君。
まあそりゃそう思うよね…日向先生も月宮先生も聞きたそうだし。
『自己紹介の時も言ったけど、私自己主張苦手なんだ。それに今日音源持って来てなかったし…良くも悪くも評判になりたくないんだよね』
「……コネだと陰口を言われてもですか?」
『勝手に言わせとけば良いんだよ。
私は別に曲を作って、歌えれば贅沢言わないし』
「東椰、三日前も言ったと思うが…」
『もっと他人と打ち解けるようにしろ…ですよね、善処はしますよ』
「あらまぁ…。
でも、入学したばかりなんだしこれから卒業オーディションまで時間はあるんだから。ね?」
まだ納得していない一ノ瀬君と心なしか心配そうにする日向先生。そしてそんな2人を宥める月宮先生。
……私、なんか間違ってる事言ってるのかな。
(ゆめゆめ/DECO*27)