第6章 アドミッション
「・・・はい、本気です。
私は・・・私がHAYATOである以上は、一ノ瀬トキヤとして思いきり歌えません」
「・・・・・・確かに、お前のその迷っている姿にケジメをつけさせたいのも事実・・・だが、〝HAYATO〟の肩書きを捨てて〝一ノ瀬トキヤ〟としてやっていけると本気で思っているのか?」
「・・・正直な話として、昨日までその事もありずっと迷っていました。
誰も〝HAYATO〟ではなくなった自分を・・・〝一ノ瀬トキヤ〟として見てくれないのでは、と。・・・ですが、それでも・・・・・・私は、歌いたいです」
「・・・・・・むぅ・・・」
「・・・自由に歌う楽しさを、彼女が教えてくれたから。
ありのままの、私として歌えと伝えてくれたから」
『!
一ノ瀬くん・・・』
よかった、取り敢えず伝わってた・・・!
これ伝わってなかったら私もうなす術なしだったよ。
その一ノ瀬くんの言葉に、早乙女学園長はジ・・・とサングラスの奥に潜ませていた眼を私の方に向ける。
・・・こ、こえぇ・・・。
「・・・・・・心羽」
『、!
あ、はい・・・』
「・・・お前がトキヤにそれを気づかせてくれた事には、礼を言おう。
だが・・・・・・HAYATOがいきなり消えれば・・・HAYATOが、HAYATOを辞めると告げて一番にバッシングを受けるのは・・・トキヤだ。それも、承知の上か?」
『・・・それでも、何かに縛られてちゃ音楽は楽しめないですよ。
自由に歌えなくなったら、そんなの音楽じゃなくて・・・ただの音になっちゃいますし。私は一ノ瀬くんを応援しますよ』
「・・・東椰さん・・・」
『それに私思うんですよ。
HAYATOの人気に火をつけたのも一ノ瀬くんなら、きっと演じてたHAYATO以上の人気になれるって』
「・・・ふむ・・・・・・。
お前達がそうと決めたのならば、仕方が無いな・・・」
『・・・・・・・・・とかなんとか言って、かの早乙女学園長の事だからなんか秘策があったりするんじゃないですか?
国家機密レベルの薬とか』
まあ、ある訳「・・・何故それを知っているのデスカー?」・・・あった・・・だと?