第5章 スマホアプリ
「ハヤト・・・?
もしかして、HAYATO様の事ですか?」
『・・・HAYATO、様?』
「春歌はHAYATOの大ファンなのよ」
「はい!
毎朝のおはやっほーニュースやHAYATO様の出る番組は欠かさずチェックしてます」
「七海って本当にHAYATOの事大好きだよねー」
「HAYATO様は・・・私がこっちに来たばかりで道に迷って人混みに流されていた時に、歌を歌っていたんです。画面越しでしたけど、とてもいい歌で・・・元気づけられたんです。
それから、すっかりHAYATO様のファンになりました」
『へー、そんな凄いんだ。HAYATOって?』
「お前な・・・HAYATOって言ったらかなり有名なアイドルだぜ?
テレビとか見ねえのか?」
『うん、見ない。
テレビ見る暇あったら散策して音楽探すし』
はっきりと言ったらみんなにぽかんとされた。
けどすぐに一ノ瀬くんが口を開いた。
「・・・前にも言いましたが、HAYATOは私の兄です。
性格は快活で元気、口癖は・・・にゃー。仕事はどんな無茶振りでもこなしています。・・・言わば、私と正反対ですね」
『ふーん・・・じゃあ歌ってどう言うのを歌うの?』
「・・・・・・なんなら聞きますか?」
『・・・ん?』
「貴女がそこまで興味を持っていたとは思ってもみませんでしたが、歌ってみましょうか?」
あれ、なんかやっぱさっきからおかしいぞ。
一ノ瀬くん、怒って・・・て言うかイラついてる?
『えーと、それって一ノ瀬くんがHAYATOの歌を歌うって事?』
「ええ。
兄とは声質もよく似ていますし、歌えると思いますよ」
『・・・んー、なんで?』
「・・・ですから、兄の歌を聞きたいのでしょう?」
『いや、それじゃ意味無いじゃん』
さっきから何言ってんだコイツって目で見られても・・・。
でも他のみんなも私達の会話についてこれてないみたいだしな。
『うーん、だからさ。
HAYATOの歌をHAYATOが歌うからHAYATOの歌なんだよ。HAYATOの歌を一ノ瀬くんが歌ったら、それは私が聞きたいうたじゃなくなっちゃうよ』