第16章 フィーリング
『は、はい』
「・・・専属の話、なんだけどさ。
心羽ちゃんはどうしたい?」
専属の話。
そうだ、私はその件で寿さんを誘ったんだ。
忘れてた訳じゃないけど、その話を抜きにしても本当に楽しかった。
寿さんは私の返答を待つように、優しく問いかけてくれた。
『・・・・・・どう、したいか・・・ですか』
「うん。
ぼく達としては、心羽ちゃんさえ良ければすぐにでもユニットとして活動しようと思ってる。
でも、心羽ちゃんの意思も大事にしたいんだ」
『・・・・・・・・・』
「いくら提案したのが心羽ちゃんで、それが本気じゃなかったとしても・・・ね」
『・・・あれは、そうなったらいいなあって本当に思ってましたから。
それにまさか寿さん達だとは思っても見ませんでしたし・・・』
「うん、解ってる」
『あっ、今でも4人がユニットを組んだら素敵だと思ってますよ?
その、それだけ皆さんが魅力的って言うか・・・』
「はは、ありがと」
訂正するように付け加えて言えば、寿さんは微笑んでくれた。
『・・・最初・・・寿さん達に、この話を持ち出された時・・・・・・正直、凄くビックリもしました。
知り合い方はどうあれ、音楽の事以外で喋ったりしても凄く楽しいです。けど・・・私みたいなイマイチ自分に自信が持てない奴に、自信を持ってる寿さん達の専属作曲家を務めるのは・・・・・・荷が重いと思います』
ゴゥンゴゥン、と控えめなゴンドラの機械音が響く中。私の返答を待っててくれてる寿さんは急かす事なく、ただただ私の言葉に耳を傾けてくれた。
『・・・・・・だから本当は・・・』
「・・・うん・・・」
『・・・・・・・・・断る、つもりでした』
「・・・・・・うん、」
『・・・でも・・・今日1日、寿さんと一緒に居て・・・。
アイドルとしてじゃない、嶺二さんを見て・・・なんて言うか・・・・・・。
・・・・・・こんなキラキラしてる人に、私が作った曲を歌ってもらえたら・・・嬉しいなって素直に思えました』
「・・・・・・!」
予想外だったのか、寿さんが目をぱちくりさせる。
私達の乗ったゴンドラは、ちょうどてっぺんに差し掛かろうとしていた。