第12章 アビリティー
・・・・・・・・・・・・あれ?
私、なんで寝っ転がってるんだっけ。
・・・うん、ちょっと待ってね。
今思い出すから。
えーと、確か・・・。
─「ねえみんな、今日は泳ごうよ!」
って一十木くんがキラッキラの笑顔で提案して、波も穏やかだったしみんな賛同したんだよね。まあ昨日も泳いだ気もするけど。
─「さすがに無いとは思いますが・・・くれぐれもはしゃぎすぎて沖まで泳いだり、単独で泳がないでください」
これはトキヤだね。いかにもはしゃぎそうな一十木くんとハヤトに向けて言ったのかな。
─「見てくださいコノハ、猫です!」
愛島くんか。なんかめっちゃ完成度の高い猫を砂で工作してたよね。
─『あれ、四ノ宮くんも給水?』
・・・そうだ、私が泳いでてちょっと疲れたから給水しにビーパラまで戻って・・・。
─「よしっ、心羽ちゃん。笑ってください♪」
来て良かったねーとか話してて、四ノ宮くんが私のにこにこるんるんな表情を見たいって言ってきたんだっけ。
─「っ、エレ・・・!!」
・・・・・・あ。
そうだ、確か・・・四ノ宮くんと喋ってたら一つだけ高い波が私達の所まできたはず。
それで、えっと・・・どうなったんだっけ?
「・・・ようやくお目覚めか?」
『・・・?
・・・あ、四ノ宮くん・・・』
「ふん・・・。
目が覚めたならさっさと起きろ」
不意に四ノ宮くんの声がして、視線をそちらに向ければ四ノ宮くんが居た。
言われた通りに起き上がって、周りを見回す。
『・・・あれ?
みんなは?』
「さあな。
大方、流された俺達を必死に探してるんじゃないか?」
『・・・・・・うん?』
ちょい待ち。
なんか違和感。
・・・四ノ宮くん、一人称も口調も違うくない?
それにメガネも外してr・・・・・・メガネ?
『・・・四ノ宮くん?』
「なんだ」
『あ、えっと・・・もしかして、砂月くん?』
「・・・なんで知ってる」
『来栖くんから前に聞いたの今思い出したんだ。
四ノ宮くん・・・あー、那月くんの中に別の人格があるって』
「はっ、あのチビ・・・。
ああ、俺は砂月だ。那月の・・・・・・影だ」
四ノ宮くん・・・じゃなくて砂月くんは、どこか寂しそうに呟かれた。