第11章 バケーション
『・・・・・・はぁ〜・・・』
コテージから文字通り飛び出して、私は砂浜から伸びてる桟橋の上に座って足を海に浸けていた。ちゃぷんと波が音を立てる。
・・・うー、なんで一日の間であんなに褒めちぎられなきゃならないんだ。
そりゃ、嬉しいよ。うん。・・・嬉しい、けど。
『・・・どう受け止めればいいんだろ』
曲の事とかで褒められるのはまあいいとして、容姿とかで褒められるなんて事は今まで無かった。
学校に入る前までずっと地元に住んでたけど、褒められる所か見向きもされなかったし。あいつと会うまでは引き篭もりだった事もあって、ある意味コミュ障だった。
・・・よくよく考えると、早乙女学園って凄いかも。
パートナーなんて組む気更々無かったのに、いつの間にか組んでた仮パートナー。・・・まあ、ほぼほぼ強制だったけど。
でもあれはほら、自己紹介をショートカットした私にも非があるし・・・それに正式なパートナーじゃ、ないし。
「・・・心羽?」
『、っ!
え、あっ・・・一十木くん?』
「っよかったぁ・・・、やっと見つけた。
隣、座ってもいい?」
『あ、うん』
色々考え事をしてたら、一十木くんがやって来た。
かなり走ったのか一十木くんは汗をかいてる。
『他のみんなは?』
「うーん、まだ探してるんだと思うよ。
手分けして探した方が見つかるだろうって事になって、俺はコテージから森側を探してたんだ」
『あらら・・・割とオオゴトになってる』
「あっ、でも心羽のせいじゃないよ!
ほら・・・俺達も、褒めすぎたかなーって」
『・・・なんかごめんねー。
私ああ言うの慣れてないからさ』
「慣れてない、か。
素直に受け止めて照れてみればいいんじゃない?」
『・・・・・・照れる、ね』
「うん!
心羽ってお世辞抜きで可愛いしさ。こう・・・にこって!」
『・・・・・・、あー・・・それは無理』
「えっ?」
『あ。
来栖くんだ。おーい』
見事な見本のアイドルスマイルを見せてくれた一十木くんから離れ、私は向こうから歩いて来た来栖くんに手を振った。
・・・普通に笑うって、どうやるんだっけ?